第1回「日韓こころの交流」シンポジウム
ソーシャルワーカーの専門性の開発と将来展望
2003年12月8日 韓国ラマダプラザ済州ホテル

発表
「社会福祉士の専門性開発と将来展望]

崔  聖均
韓国社会福祉士協会 会長


T.はじめに
今の時代の人々は、夢を持っていません。自分自身が何を願っているか、何故生きているかについて、苦悩とそれを求める努力があまり見えません。夢はビジョンであります。ビジョンは見えない未来を見る能力であり、熱望する未来に対する絵でもあります。ビジョンは現在の想像力をもって渇望する未来を創り出す能力であります。従って、夢を持っていない人は、現実に安住し目標のない生き方に留まるほかはありません。
 それでは、具体的に社会福祉士のビジョンとは何でありましょうか。これに対する一般的答えは、「貧しい隣人のために身を捧げる、または疎外されている人々の苦痛を減らす」ことだと思われます。勿論これらの答えは、まちがいではありません。




崔  聖均
韓国社会福祉士協会
会長
   しかし、このような考え方は、至極古典的な思考ではないかと思われます。現代における社会福祉士のビジョンは、これよりははるかに進歩した積極的なものでなければならないと思います。即ち、そのビジョンはクライエントの悩みと苦痛を分かち合い、そしてまた減らす役割に留まらず、彼らの生活を自ら変化させる積極的目標を立て、それを推し進めることにあると思われます。
 そのような役割を果たすために、専門家として生まれ変わることが何よりも重要ではないでしょうか。専門家という立場は自分独自の分野を担い、その仕事を遂行するにおいて、適切な補償を受けながら働く人たちであると思います。そして立派な社会福祉士になるためには、何よりも自分達の専門的責任を充分果たすことにあると思われます。それでこそ、社会福祉士としてのふさわしい権利を求めることができると確信いたします。

U.社会福祉士(Social Worker)

1.概念
 1970年、社会事業従事者として始まり、1985年、社会福祉事業法が改正されてから、社会事業家、または社会事業従事者の名称が社会福祉士として規定され、社会福祉士資格が公的に交付されました。以後、社会福祉士は社会事業学の学問的体系においても登場するようになりました。英文ではSocial Workerと表記されています。
 社会福祉事業法第11条を見ますと、「社会福祉事業に於ける専門知識と技術を備えた者を社会福祉士とする」と規定されています。

2.社会福祉士の変遷
 1970年制定された社会福祉事業法ならびに施行規則には“社会福祉事業従事者”という資格制度がありました。社会福祉事業法は、社会福祉法人、施設、人材等に関する事項を規定することによって、外国援助に依存しながら政府の指導監督も受けず、又、財政支援の枠から外れていた民間社会福祉分野の援助を放置せず、政府は財政支援と監督をとおして、民間社会福祉事業に対し責任を持つと共に、社会福祉制度の本格的樹立に着手するようになりました。このような変化の中で民間社会事業活動は慈善的概念から福祉的概念に進んできたのであります。従って、社会福祉事業に従事するサービスの伝達者も、そのサービスに対する社会的法律的責任を負うと同時に、一定水準の資格を要求されるようになりました。
 社会福祉事業法では、そのような事業に従事する人達を、社会福祉事業従事者という法的名称を与えると共に、同時に一定の資格を要求するようになりました。
 最初は、保健社会部がこの資格証を各従事者に交付しましたが、1972年8月9日、社会福祉事業法施行令の改正と共にこの権限が市道の自治団体にその交付が委任されました。しかし、資格基準が最初は非常に低かったのであります。実例をあげれば、7年以上社会福祉事業に従事した者が国立社会事業訓練院で単に8ヶ月以上の訓練を受ければ社会福祉従事者資格を得ることが出来たのであります。専門職としては客観的に満足することができないほど低い水準でありました。
 このような実情は、社会事業教育を正規大学で履修した人達の数が少なかった点と韓国動乱のために一時に社会事業施設が急増し、純粋な慈善的善意を持って多くの人が社会事業に従事するようになった状況から考える時、社会福祉事業従事者の資格を低く定めたのも現実的打開策であったと理解されます。
 しかし、このような状況のかたわら正規大学で社会事業を専攻した人達が集って韓国社会事業家協会(現韓国社会福祉士協会)を設立し、専門職発展と向上のために働き始めたのであります。
 社会福祉事業従事者資格制度は、1983年に改正され、社会福祉士資格制度が新たに設けられました。1985年3月1日、社会福祉事業法施行規制改正に伴い、社会福祉士資格証を、韓国社会福祉協議会会長が政府から委任を受けて交付するようになり、1990年11月19日、社会福祉事業法施行規則の変更に伴って、資格証を保健社会部長官の名義で交付するように、また、変更されました。1999年1月1日、同法律の再改正により、資格証交付業務が現在の韓国社会福祉士協会に移管されました。
 社会福祉従事者の資格制度が1970年代、1980年代に至って大きく変わってきました。大学で社会福祉を専攻した卒業生の数が増加するにつれて、社会福祉士の資格の基準をアップグレード(up grade)する基盤が徐々につくられてきました。
 しかし、社会福祉事業法の施行規則に新しく設けられた社会福祉士は、名称は変わったものの実際は社会福祉従事者を全てこのカテゴリーに含んでいたのであります。従って、正規の大学で社会福祉を専攻していない人達も、社会福祉士になれる道を開いていたのであります。その代わりに、正規の社会福祉教育を受けていない人も、社会福祉機関、施設等で7年間以上従事し、国立社会福祉研修院が行う教育を24週間受けた場合は、社会福祉士3級の資格を与えられました。3級の資格を得て、また、5年間以上の実務経験があった場合は、2級の社会福祉士に昇進し、やがては1級社会福祉士にまでなれるような仕組みになっています。社会福祉士養成課程が2003年度から全国の5地域で実施されるように分散されています。

3.社会福祉士の現況
 1995年以降、急激に全国の多くの大学に社会福祉専攻学科が増えました。現在、150以上の大学に260以上社会福祉関係学科が設置されるに至りました。例をあげますと、専攻、副専攻、そして複数専攻というかたちで社会福祉を学んで卒業する人達が年に約13,000名に及んでいます。このような人達は殆んどが社会福祉士の資格を取得しております。
 1985年3月1日、社会福祉事業法施行規則の改正に伴って、社会福祉士資格制度が導入されて以来、2003年9月30日現在、社会福祉士資格を取得した人数は総計84,290名に上っています。
 しかしながら、社会福祉士の数は急増していますが、社会福祉士の専門性向上という立場から考察する時、未だその質的管理が充分に及んでいないのも率直な現状であります。これは他の保健医療専門職に比べて再教育又は補習教育が義務的に行われていないのと、国家資格証の周期的更新制度が採れていないということがその主な理由ではないかと思われます。


 2000年韓国社会福祉士協会は現職社会福祉士を対象に基礎実態を調査したことがあります。それによると普通3種類(医療保険、国民年金、雇用保険)の社会保険に全員が加入しています。総職歴年数は平均9.6年を表しています。10〜19年勤務の経歴者が1,551名で全体の26.5%を占め、福祉分野に勤務した経歴は平均7.93年、6〜9年間勤務者が1,398名(24.3%)に及び一番高い比率を占めています。
現在の職場に勤務している平均年数は6.19年、2年以下が2,438名(40.7%)で一番高い比率を示しています。
給料の水準を見ますと、平均年額が1,671万ウォンであります。階層別給料現況は大概次のように表れています。

(年額) 1,200 ― 1,500万ウォン ― 1,744名(32%)
     1,500 ― 2,000万ウォン ― 1,611名(29.5%)
     2,000 ― 2,500万ウォン ― 932名(16.9%)

総職場経歴平均9.6年を考慮すれば、給料は甚だ低い水準に留まっています。職歴年数の非社会福祉分野従事者の場合は平均年俸が2,162.05万ウォンに及んでいます。現在、社会福祉士の平均年収が1,671万ウォンで、その差が無慮491万ウォンに至ります。
 次に勤務日数を見ますと、週6日勤務者が65.2%を占め、一番高い比率を表しています。週5日勤務の場合は僅かに4.7%にすぎません。そして週間勤務時間は平均52.85時間に及び法定時間44時間をはるかに上回る過重な状況にあります。このような時間外勤務に対し45.8%の勤務者は全く時間外手当てを受けていない実情であります。58.8%の応答者が「給料水準が勤務量に比べて低い」と答えています。これを年齢別にみますと、20代(61.9%)、30代(59.6%)、40代(52.7%)、50代(48.6%)のように調査されました。そして47.8%に該当する応答者が離職を考えていると答えています。

社会福祉専門教育現況
 韓国に社会福祉(事業)専門教育が最初に導入されたのは米国からであります。朝鮮動乱の際、あまりに多くの戦争被害者、即ち戦争孤児、未亡人、避難民等が急増しました。これらの貧困者達を救うために外国から援助団体が多く入って来ました。しかし、専門的社会事業家が殆んどいない実情にありました。そのうちに少数の人が、アメリカへ行って専門社会事業を習って帰りました。1947年にキリスト教ミッションスクールである梨花女子大学校がキリスト教社会事業科を設置し本格的に専門社会事業家を養成し始めたのであります。
 年度別に、各大学校の社会福祉学科設置状況を見ますと次のとおりです。

1947    梨花女子大学校
1953    江南大学校
1958    国立ソウル大学校
1962    中央大学校
1964    大邱大学校
1969    ソウル女子大学校

 1970年代、1980年代に入っても社会福祉学科を新設する大学が全国的に大きく増えてきました。その当時は経済発展の成果に伴い、国富の分配という立場から社会保障制度並びに社会福祉事業の充実と言った国家政策の方向に従って社会福祉専門人力の確保が急務でありました。
 2003年現在、全国における社会福祉学科を設置した大学の現況は次のとおりです。ある大学は社会福祉に関係する数個の学科を設置しているところもあります。

全国大学社会福祉学専攻学科設置現況


V.韓国社会福祉士の展望

 社会福祉を実現する両軸である物質的資源の確保と伝達体系の樹立は重要です。しかし、これと並んで重要なのは社会福祉プログラムを作り、社会福祉実践現場で社会福祉サービスを提供し、実践をとおして現在の当面問題点を改善し、または発展させていく専門人材の確保が何よりも重要であります。即ち、社会福祉の質の向上は誰がサービスを提供するかによって左右されます。しかし、社会福祉士個人、もしくは所属機関の努力だけでは社会福祉士の専門的正体性を維持発展することは難しいのであります。ですから社会福祉サービスに従事もしくは関連する全てが一致団結してやっていかなければならないと思います。
 この団結された結集力が結局、韓国社会福祉士協会であります。全国の社会福祉士達が韓国社会福祉協会に積極的に参加し、みんなが支援と協力を尽した時、その協会が本来の技能と役割を果たすことができます。そうすることによって、社会福祉士たちの専門的地位と権威が向上し、同時に処遇も改善されるのではないでしょうか。

1.社会福祉士に対する処遇および勤務環境の改善
 現在、全国平均扶養家族数の基準を3名にした時、標準生計費(月)は約2,193,807ウォン(日本円で約219,380円)になります。しかし、社会福祉士の平均賃金は1,318,110ウォン(約131,800円)にすぎません。全国平均標準生計費と差異は無慮87,570万ウォン(87,570円)になります。これを現在、社会福祉担当公務員の初任年俸が1,800万ウォン(約180万円)ですから、この水準に比べても約500万ウォンの差があります。これから先、社会福祉士に対する適切な処遇改善が大きく要求されます。

2.社会福祉士の資格制度強化
 社会福祉士の資格が法定化はされていますが、質的水準に置いては色々改善されるべき問題があります。短い時間に社会福祉士の急増と、また社会福祉教育機関が1980年〜1990年代に全国的にその数が急激に膨張した結果、質的向上を図ることが充分できなかったのであります。社会福祉士が国家試験制度になっていないので、単に経歴と学歴を標準にして与えられる資格制度は、質的バランスを維持するのにも弱点があるし、地域社会の認定(Community Sanction)を得るのにも力強い背景が弱いのも事実であります。将来は、他の保健医療専門職のように国家試験制度を導入すると同時に周期的に教育、及び訓練の実績をもとに資格証を更新することによって、質的向上をはかることができると思われます。幸いに2003年から1級社会福祉士に対し試験制度を採り入れることになったのは大きな進展だと思われます。

3.社会福祉士専門職の正体性確立
 社会福祉サービスの需要が増加するにつれて、社会福祉士の役割が大きくなると共にその重要性も益々伸びています。
 これから先、社会福祉士は社会福祉環境の変化に伴い、自らその専門職としての正体性を明白にしなければなりません。これは専門職としての役割と機能の定着とクライエントの問題を取り扱う技術と方法の質的並びに効率的独自性を展示(Demonstration)しなければなりません。そして、社会福祉専門教育と現場における社会福祉実践の間に緊密な協調が実現されなければならないと思われます。人間環境の変化、科学の発展、国家政策の改革、社会資源利用等、様々な条件を総合的又は効率的に考慮しながら、社会福祉士の専門的在り方を創り出さなければならないと思います。

4.体系的な知識と技術の習得
 一般的に専門性とは、ある分野において職業を行うに当たって必要な技能を意味すると思います。
 そのような専門性を発揮される人を私達は専門家だということが出来るでしょう。全ての専門職は、体系的知識を要求されます。専門家になるためには、実務的体験と知識的経験、並びに技術の独自性、または独占性を所有するべきだと思っております。
 社会福祉は応用科学でありますので、基礎知識の習得も非常に重要であります。また、専門的技能のために方法論と技術論の教育が強化されなければならないと思います。特に現場での専門性の発揮は、何よりも社会福祉士の認識を高める契機になると思われます。社会福祉士の質的向上のために教育の拡大は非常に重要であります。このために社会福祉事業法施行令を改正し、社会福祉士資格証所有者は、少なくとも3年毎に資格証を更新することが望まれます。そして更新の場合は、補習教育を必修することが望まれます。また、社会福祉従事者訓練規則を改正し、社会福祉士教育訓練(再補習教育)を義務付けるべきだと思います。社会福祉士(公共伝達体系および民間伝達体系勤務者)に対するすべての再教育を、韓国社会福祉士協会にその管理と執行をゆだねることを、私達関係者は望んでいます。

5.社会福祉伝達体系の改善
 社会福祉伝達体系は、社会福祉サービスをサービスの対象者に提供する公共機関と民間機関、または民間機関の間に垂直的、そして水平的な組織配列を意味するものと理解しております。社会福祉サービスの効率性と平衡性を決定する段階において、何よりも重要な核心的要素は、社会福祉伝達体系を整備することだと思われます。そうしなくては社会福祉の専門的実践には限界があります。全国の232箇所の市郡区単位に、社会福祉事務所を設置することによって、伝達体系が改善されることと思われます。これは公共の福祉伝達体系になると共に、民間との協力体系にもなると思います。こうして地域社会福祉館の間に連携をはかり、それぞれの機能がより効果的に実践されることと考えられます。従って、社会福祉伝達体系に携わる社会福祉専任公務員の数も、増員配置するようになるべきだと思われます。

6.社会福祉とサービス分野の拡大
 2003年現在、全国に924箇所の社会福祉収客施設があります。これらの施設に収容されている入所者総数が80,463名に及んでいます。政府当局の想定によりますと2010年までにはその数が13,000箇所に増加する見込みだそうであります。高齢者人口の増加を考慮すれば当然そのように推察されます。問題は、そのような施設が専門サービス別に分化されることが予想されます。一例をあげれば、障害者施設、老人施設、児童施設、矯正施設、社会福祉館(Community Service Center)等、益々専門化されるでしょう。これに加えて、学校、医療、産業、軍隊、教会分野においてもそれぞれの社会福祉的サービスが必要になると思われます。このような分野別、社会福祉サービスの需要に従って、社会福祉士の専門性も当然分野別に対応策が講じられるべきと思われます。このような新たな分野を開発することによって社会福祉士の専門性と地域社会の認定が一層強化されることと思われます。同時に毎年各大学社会福祉学科を卒業する13,000名の専門人力をそれらの分野に吸収することが出来ると思われます。現在は不幸にも卒業生の約30%しか就業が出来ない状況にあります。社会福祉専門人力の需給計画は何よりも重大であります。
 また、一定分野に集中している社会福祉士の在り場を即ち社会福祉館、社会福祉施設、社会福祉職公務員分野だけでなく、他の分野、例をあげれば社会保障機関(国民年金管理公団、国民健康保険公団、韓国障害者雇用公団等)にも進出するよう積極的に努力すべきだと思われます。そうすることによって社会福祉専門人力の拡大が現実化されるのではないでしょうか。

X.おわりに

 それぞれの地域社会は、その実情が多様であります。そして、その地域社会が抱えている問題の類型もいろいろ異なり、また、はやい速度で変化していきます。従って社会福祉機関は多様な地域社会の欲求に対し反応しなければならないと思われます。絶え間なく新しい方向に自己開発を進めなければなりません。もちろん、社会福祉士もその役割と責任に対し、常にイノベイションを実現するべきだと思います。
 社会福祉士は社会福祉実践の全過程に介入し、クライエントの為に資源の開発、連結を図り、また社会政策及び社会統制の媒介者、促進者の役割も果たすべきだと思われます。近頃になっては、社会が複合化、細分化するにつれて、社会福祉界も自然にそのような状況に変わってきました。従って社会福祉各分野においても領域性に専門化された知識とサービスが求められつつあります。社会福祉大学においても社会福祉学を基本として、児童福祉学科、老人福祉学科、青少年福祉学科、産業福祉学科、精神医療社会福祉学科等、細分化現象が起こるのは当然の方向だと思われます。
 社会福祉士はそれぞれ自分の専門領域を定立し地域社会が当面している欲求と問題に迅速に対応する能力とより一層の効率的専門サービスを伝達する方向に進めなければならないと思われます。
 これらを実現するためには、社会福祉士はより多くの情報を収容する努力が必要とされます。そして人間発達と社会変化課程においての深い洞察とこれらの相互作用に関する知識と経験が要求されます。
 地域社会福祉館の専門社会福祉士は絶え間ない知識習得をとおして自己職能の改善ないし開発を追及しなければならないと思います。同時に外部からの挑戦を肯定的に収容し、また緊密な交流を保ちながら、知識と情報の共有とネットワークを積極的に拡大する役割を果たさなければならないと思われます。